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●行為と相即するデザイン

2005/05/21 (土) 00:58 | 駄文

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この観点に立って深澤氏は近年、「行為と相即するデザイン」というコンセプトを打ち出しています。「これは行為にデザインが溶けてしまうという意味。噛み砕いて言えば“はまってる”ということです」。
そこで重要になってくるのが“Active Memory”であると深澤氏は言います。「それは、日常的には意識していないにも関わらず、みんなが共有している身体的な記憶のことです。たとえば、小指の先をちょっと怪我しただけで、妙にコーヒーカップが持ちづらいということがある。普段は意識しないが身体は知っている小指の重要な機能を、このとき初めて意識するわけです」。
「デザインは“必然”であって、僕たちが作り出すものではないという気がするんです。僕がデザインをするときに一番大切に思っていることは、自発的に何かを作ろうという意志よりも、既にみんなが共有しているものを見つけ出して、それを具体化していくという感覚なんです。だからそれは、自分の個性とか主張ではないと思っています」。
意識的であることが美からもっとも遠い。
最後に、俳人・高浜虚子が主張した「客観写生」という概念に触れました。
「ある心情を表現するために俳句を詠むのではなく、そこにある現象を客観的に詠まなければならない。その結果として詠む人の心情についても、暗黙の同意のようなものが生まれるということです」。
デザインについても同様、と深澤氏は言います。「自分で自発的に作るのではなくて、既に合意されたものを探して、その存在のリアリティを伝えることのほうが意義があると感じています。自分がこうだと主張する態度は、あまり美しいとは思えないんですよね」。