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●自分だけのデザイン観をつくる

2005/05/23 (月) 22:08 | 駄文

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デザイナーはある種の説得業で、自分の考え方がいかなるものであるかを世の中に発信し続けなければなければならない。デザイナーは、基本的に社会の中で自分の名前で立っている、個としての存在である。その個に対してどういう仕事が来るかは、モノの考え方をどのように社会に伝えてきたかにある。
最初にひとつ言っておきたいのが、あまりすべての話を鵜呑みにしないで欲しいということ。いつも私は、デザインの話をしてそれが他人に歓迎されること、平たく言えば「ウケる」ことにどこか後ろめたさを感じている。仕事ができるデザイナーというのは、それだけ自分の仕事を他人に話す能力に長けているものである。そういうデザイナーが来て自分のデザインを話すのは、まるでエンターテイナーが来て観客相手にショーでもやっているかのように感じることがあるのだ。それをただ面白がっているだけでは、情報を消費しているだけである。話の背後にある矛盾や、自分だったらどうするかをリアルな想像をもって聞くことが、先を目指す為の良いトレーニングになる。何よりも大切なのは、自分自身のデザイン観をつくることなのだから。
「情報の建築を作るのがデザイン」「感じ方をデザインする」
デザイナーは「デザインを通して受け手の頭の中に情報の建築を作っている」と考えています。視覚、触覚、聴覚など様々なチャネルを通して入ってきた情報が頭の中に蓄積され、建造物として構築されていくイメージです。
触覚一つとっても、指先でなぞった触覚と、手でドアノブを押したりするときの腱とか筋肉で感じられる触覚はまったく別物ですよね。そう考えると人間の「センス」は無数にあるのかもしれない。とにかくそれが僕らの仕事のフィールドだとすると、パソコンのモニターの中で視覚的に作業しているだけでは情報としていかに偏っているかということを念頭に置いて、これからお話しする私の仕事を見てください。
竹尾は紙のHAPTICな豊かさを世の中に供給する会社であり、封筒や名刺のひとつひとつを通じてそのメッセージを伝えている。ペーパーショーは、竹尾のマーケティングの一環であり具体的なブランドイメージを発信する場であるとともに、竹尾自身がデザイナーとともに新しい使い方を実験する場でもある。今年4月のペーパーショーは、「HAPTIC」というテーマで展開した。
HAPTICとは、触覚を喜ばせるという意味を持つ。普通は、ものを作るモチベーション(動機付け)は形だが、今回は触覚から発想してもらい、視聴覚以外のメッセージの重要性を明確に意図した。形からでは発想できない、感覚を総動員して感知していく展覧会となった。