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●お菓子にできることは何か

2005/11/30 (水) 23:02 | 駄文

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最初にお菓子のパッケージを依頼された時、お菓子のデザインで何ができるのかと考えた。それまで携わったウィスキーや化粧品などは、少なくともある程度の期間残るものであり、インテリアや雑貨のような要素があった。しかしお菓子は、開けてから5分でゴミ箱へいくようなメディアのデザインである。そこで一体何ができるのか。思いついたのが「ブランド」である。物自体は捨てられていくけれど、人にはそれを見たという記憶が残る。その記憶をどうやって先へとつなげていくかを考えてはどうだろうか。デザインは、残しながら進化させることができると気づいたのである。たとえば、チョコレートの「m&m's」や「Kit Kat」。言われただけで、なんとなく頭に描けるものがあるだろう。これらはずっとマイナーチェンジしながらデザインを残して記憶を次につなげている。それがブランディングにおいて重要なのである。
価値観の共有
仕事には必ず条件がある。しかし世の中の人々はみな価値観が違っているもので、ときにはその条件がよく理解できないことがある。それを力でねじ伏せるのではなく、ポテンシャルをどうやったら引き出せるかというのがデザインだ。その環境が持っている条件の中で自分は何を見つけられるかをポジティブに考えることにしている。
大正製薬の「ゼナ」のデザインはかれこれ200案ほど提出したが、最終的に自分の推していた最初の案が採用されることになった。しかしそこに至るまでに繰り返していた過程は無駄だったのではない。様々な人たちとどうやって価値観を共有しながら物事を先へと進めていくか、そのプロセスが実はとても重要な仕事なのである。